鈑金塗装ガイドに寄稿している記事ですが、ボデーショップ佐野としてもお伝えしたい内容ですので、転載を致します。
結論から言うと、一般的に保険会社の定義する1回の車両保険で認められる1事故とは、同じ時間、同じ場所で起きた一連の事故の事となりますので、離れた2つの事故が別のタイミングで起きた事故であれば、認められません。
離れた損傷でも認められる主なケースは、狭いところに入り込んでしまったため、脱出する移動のためにキズをつけながら出るしかなかった場合と、車両が回転してしまうほどの事故の場合で、これらは離れた場所のキズでも認められる場合があります。
(ただし、上記の場合でも保険会社が事故報告に基づき現地を確認し、確かにココならぶつけながら入ってぶつけながら出る動きになるかもね、と確認が出来なければ、認められない場合もあります)
離れた損傷を同一事故で報告をしても、保険会社から「別事故となりますので、どちらも直すには2回車両保険を使う(=6等級ダウン)になります」と言われるのは何故なのか、解説していきます。
車両保険契約の勘違いと、とりあえず報告してみるケース
車両保険の使用で全てキレイに直るという勘違い
1回(=3等級ダウン)車両保険を使うと、過去に起きた全ての事故を全て直せると勘違いされている方がいらっしゃいます。
特殊な例、例えば「もう運転をしないし保険契約も解約するので、翌年の保険料は関係無い。全て直して保険満期までに売却する。」というケースの場合、免責金額が0であれば同様の事が可能ですが、そういったケースはほとんど見受けられません。
これは、ご家族の方への等級引き継ぎといった制度がある事も抑止力となっているかもしれません。
また、恐らくほとんどの保険会社が、3年以内の事故日でないと支払わないとなっている等、事故報告自体が遅い場合は支払われないケースもあります。
離れた場所の損傷でも万が一認められたらラッキーという場合
保険会社が事故報告を基に確認する項目は下記の内容が中心となります。
- 損傷の高さは事故報告に見合うか(対象物の高さの確認)
- 損傷の新しさは事故報告に見合うか(事故日の確認)
- 損傷の性質は事故報告に見合うか(尖った対象物か、ポール的か・壁的かどうか等)
- 損傷の方向は事故報告に見合うか(前からなのか後ろからなのか)
- 付着物は事故報告に見合うか(塗料や破片が付着しているかどうか)
主に以上の5点について確認していきます。
離れた損傷が同一事故で認められるとすれば、これらが全て一致し、否定する材料が無い場合となります。
いつ出来たか分からない複数の損傷を発見したケース
イタズラキズ等がこのケースに該当します。
悪質なイタズラは複数パネルに渡るため、離れた箇所に損傷が発生している場合があります。
しかし、通常は危害を加える道具を複数所持しているとは考えにくいため、キズの性質が異なるイタズラキズや、左側面と右側面は同一の道具とハッキリ分からないと同一事故と認められないケースがあります。
イタズラをした加害者が分かっている場合、賠償責任保険等を使ってもられば、離れたキズもイタズラである事の確認がスムーズだと思います。
まとめ
離れた損傷が一事故で認められるケースは、意外と少ないものとなります。
特に事故報告とは見合わない損傷であれば、保険会社のチェックも厳しくなります。
本当に同一の事故なのに認められなかった、という場合は、事故報告の内容が正確でない場合も考えられます。
事故は一瞬のため、記憶が曖昧な部分もあるかもしれませんが、対象物やハンドルのおおよその角度(車両の動き)など、分かる範囲で正確な事故報告を心掛け、分からない部分は適当に解答せず分からないと伝えた方が良いかもしれません。
投稿者プロフィール
- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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