様々な理由により、バンパーはもう修理するものではなくなってきています。
最近の車であれば、BSM(ブラインドスポットモニタ)の関係で修理すると機能が損なわれる可能性があったのですが、他にも理由ができています。
もともとバンパーは取替でも安かった
特に国産車では、バンパーの値段が安く、色付きのバンパーは修理して塗装するより安い場合もあり、多くの車種で修理と交換の金額にあまり差が無いため交換を推奨する事が多かったと思います。
しかし、コロナ禍以降はバンパーの値段もメーカーや車種などによって大きく変わりました。
色付きバンパーが倍くらいの値段になっていることもあり、
調べもせずに「交換で大体いくらぐらいですね」と伝えられなくなってきました。
BSMの登場で修理不可の箇所などが出てきた
特にリヤバンパーの内側に、BSM(ブラインドスポットモニタ)が配置されそのレーダーが照射される範囲がでました。
その関係で、照射される範囲は修理が出来ない、修理すると場合によってはレーダーの到達距離が短くなって機能を損なう可能性が出てきました。
もちろん、メーカーはBSM装着車のBSM照射範囲周辺の修理を推奨しませんので、新車時と同程度に機能を回復するという意味では部品交換、例外的に修理する場合でも、工場側は機能を阻害する説明する必要が出てきました。
(知識のない工場は説明もできませんし、他社の交換見積りを見て「この程度も修理できないのか」と言いますし、トラブルが発生しても「安いから仕方ない」と逃げることがあります)
ここまでは、知識があればもう昔の事になりつつあります。
今回はさらに、美観の問題で修理が出来なくなってきました。
バンパーの端部に(変な)段差(ライン)が出始めた
この段差・・・この部分にキズが入ると再現が非常に難しいと思われます。
ほとんどの工場で「段差がなくなる」作業方法になるでしょう。
この部分にキズが入っていなくても、個体差があるかもしれませんが塗装が溜まりやすくなるなど、美観の問題が出る可能性があります。
この段差を再現し、かつ新車のように塗装するとなると、果たしてその努力は工賃に転嫁できるのか?その工賃を負担していただくなら新品交換の方が安いのでは?という事になるでしょう。
こちらは、恐らく修理していないであろうバンパーで段差があるものを撮影してみました。
たまたま全部パールホワイトです。







新車・新品の時点で線が一定の高さでは無い車種がありますね。
上に行くほど段差が少ない、塗装に埋もれているというものもありますし、
段差が途中でなくなっている、車種によっては角が丸い、
段差の部分でややクリアが丸みを帯びている(高い)タイプもある等、
1本1本異なる状態の可能性もあり、反対側を見ても参考になるのか分かりません。
修理によってどのようなリスクとなりえるのか、想定がしづらく、お客様にご説明もしづらいものとなるでしょう。
元々段差が不均一なところにクリア塗装が乗ることで、より段差が顕著になる例もあります。
こちらは修理した例ですが、元々端部の段差で丸みを帯びていたところにクリア塗装が乗る事で、丸みが大きく(高く)見えます。でも下の方は段差が少なかったために丸みを帯びていません。
上から見ると元々段差の部分に色が乗りきっておらず、そこに色が入るように塗装すると段差が無くなる、色味が変わる可能性があるなど、それはそれでリスクがあります。



まとめ:バンパーは交換が中心になってきている
「細かいところは気にしないので、直してください」
というお客様ばかりではありません。
「実際に見たら思っていた以上に気になるのでやっぱり交換してください。」
と言われて、修理代も交換代もお支払いいただけるなら良いですが、予算があるなら最初から交換したほうがお互いに良いですね。
工場側にとって、知識があればあるほどバンパー修理にはリスクが伴うようになりました。
部品が無い、予算が無い場合にバンパーの修理をする事もございますが、
全てのリスクを修理工場側が把握できるわけでもありません。
お客様の立場であれば、特にバンパーを修理する場合に新品交換との差額や想定されるリスクを確認し、許容できる内容なのかどうかをご判断いただきたいです。
相談しても「大丈夫、今までトラブル無いから」という回答の工場だと、バンパーの修理リスクに対する知識が無いかもしれません。
「BSMも(段差も)無いので修理でも問題無いと思いますが、一般的な塗装に対するリスクとして色が変わります。近接センサーはあるのでエラーが出るかもしれませんので、エラーの内容によってはディーラーでしか消去できない場合があります」というのが一般的な工場で得られるベターな回答でしょうか。
投稿者プロフィール

- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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