鈑金塗装工場の方ぐらいしかアクセスしないであろう、業界紙であるBSRのWEBサイト、
BODY SHOP REPORT WEBのhttps://bsrweb.jp/industry/より業界情報の統計として車体修理工場軒数推移がございます。

年3%ほど減少している修理工場数をどのように集計しているかは分かりませんが、現在の車体整備工場(鈑金塗装工場)はそのほとんどに見積もりシステムが入っていると考えられます。
例えば、見積りシステムの販売数等の統計があれば、そこから割り出す事も可能・・・かもしれません。

データを基に、10年後の鈑金塗装業界を想像していきます。

整備士になる人がいないので、鈑金塗装業界にも人は来ない

鈑金塗装業は整備士資格がなくてもできますが、自動車整備士の資格を持っている方が転職先として鈑金塗装業界に入ってくるケースも多いです。
しかし、そもそも整備士になる人が減っています。

整備振興会が公開しているデータを基に計算をすると、
令和6年第一回試験の筆記試験合格者数は1,645人だそうで、統計が出ている平成23年代一回試験と比較すると10.5%減少しています。
しかし、問題は第二回試験です。
第二回試験は3月に行われ、専門学校や大学校の学生が主に受けるのか分かりませんが、第一回の3倍以上の方が受験されます。
令和5年第二回試験では、平成23年に対して21.1%減少しています。12年で21%を少ないととる事もできます。

自動車系専門学校に入学する人は思ったよりも減っていない

文科省の統計を抜粋すると、令和3年の時点で”入学者数は18年間で約47%減少”と記載されています。

しかし、卒業者数のデータと、卒業者が自動車整備関連の仕事についたかどうかの統計は(簡単に調べた限りでは)出てきておりません。
もちろん、専門学校以外、例えば工業系の高校から自動車整備士を目指すという方も0では無いと思いますが、そう多くは無いでしょうか。

ボデーショップ佐野に勤める20代の整備スタッフの同窓生で、整備資格のある工場に勤めている友人はもう居ないそうです。
すると、卒業者数や自動車整備以外の道を選んだ人の統計が出ると、高度化する自動車整備・車体整備業に対して人の面で整備作業が滞る、という事も増えてくるでしょう。

ディーラー直営車体整備工場は納期2ヶ月も当たり前になってきた

お客様から耳にするお話や、業界の方から伺う話でも出てきていますが、
事故修理を依頼すると2ヶ月待ち、3ヶ月待ち、という事が出てきています。

ようやく値上げが社会的にも認められてきておりますが、ここから先は現場作業者の奪い合いが始まるでしょう。
給与面はもちろんのこと、年間休日や設備投資、作業のしやすい工場・職場作りを行っていかないと、人が居なくなって廃業、という工場が出てくると考えられます。

自動車整備白書のデータによれば、平成23年から令和4年まで自動車整備士の平均年齢は毎年0.35年増加しているようです。
令和4年で平均年齢が46.7歳ですので、2035年には50歳を超えるでしょう。
新規入学者数の減少、職業として整備士を選ぶ人の減少、を考慮すれば、さらに加速して2035年には55歳を超えても不思議ではありません。

資格無しで板金塗装業界はチャレンジできる!が・・・

鈑金塗装という業界は、整備資格がなくてもチャレンジできます。
しかし、全くの未経験で鈑金・塗装をやってみたい!という趣味の延長で来るには、ちょっと難しい業界である事は事実です。

趣味の延長で板金塗装の道を目指して、お金を貰うほどのクオリティを習得できず1年以内に辞めていく若手が多かったのか、弊社も含めて外国人技能実習生・特定技能を持った外国人技術者頼みの工場が増えてきました。
(これは工場側の教える態勢・姿勢にも問題があるのですが・・・ここは分業化で今後変わっていくと思います)

見込みのある日本人一人に時間・お金をかけて教育して、技能実習生を2-3人つける、といった形で分業・効率化を行う、そういった工場が増えてくるのではないでしょうか。

需要に対して供給が無さすぎる世の中になりますので、技術や知識があれば今の業界では考えられない高給取りの方が出てくる・・・かもしれません。

まとめ:全て自動運転車両にならなければ、需要に応えられなくなる

前述の通り、既にディーラー直営の鈑金塗装工場は需要に対し供給が不足しているところも増えています。
10年後には、ディーラーだけでなくほとんどの工場で現在の需要に応えられなくなると思います。

一番の要因として、高齢化、高度化に対して、人や設備が追い付いていません。
仕上がりよりもスピードを重視した(いわゆる「カーコン的」)工場の需要・供給が増加する可能性もありますが、特定整備といった法規制・許認可が必要な作業が減少する可能性はほとんどありませんので、出来る事は限られてくるでしょう。

多くの工場が価格転嫁をしていますが、ここから先の環境変化を見据えると、やむを得ない値上げと言えます。
車を所有しない時代になってきた今、「仕上がり」と「価格」と「スピード(作業完了までの日数)」の全てを高水準で満たした工場というのは難しく、1つか2つに特化した工場が増えていくのではないかと考えています。
ボデーショップ佐野がどの位置に属する工場となるかは分かりませんが、お客様に選ばれ、継続していける工場でいられるよう努力していきます。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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