2024年現在、というよりもここ数十年、ほとんどの鈑金塗装工場が、その仕事の中で保険会社のアジャスターと「協定」という打ち合わせを行っています。
この時、保険会社は工数を自研センター指数で、1時間あたりの単価を地域対応単価で話をしてきますが、この地域対応単価とは何か、考えてみます。

全国では東京が一番高く、恐らく沖縄か北海道が一番低い

地域対応単価における「地域」とは、都道府県ごとに分かれているものと推測されます。
全国で一番高いのは東京で、沖縄か北海道が一番低いと思われます。

アジャスターに聞くと、地域対応単価は地価等で考えられているので東京が一番高いそうです。

ディーラーが一番高く、それ以外はほぼ横並び

「地域対応単価」には、同じ都道府県の中でも2段階あると想定されます。
例えば、「東京のディーラーはこれぐらい、その-5~10%ぐらいが他の工場」というイメージです。

工場の設備等は考慮されない

不思議な事に、工場の設備がどんなに優れていても、ディーラーより整っていて、ディーラーの集中工場より評判が良くても、それは対応単価にほとんど考慮されません。
唯一ここ数年で対応単価に影響が出始めたのが、第三者認定機関による認定です。
日本では、業界人以外ほとんど知る由もありませんが、TUVというヨーロッパの認定機関が有名です。

地域対応単価は”妥当性”があるのか

ここまでが地域対応単価の説明です。
ここからは、その妥当性について考えます。

例えば、東京の地域対応単価は、港区でも八王子市の山中でも弊社から歩いて行ける練馬区でも、同じです。
つまり、都心に工場を構えるほど不利という事ですね。妥当性は・・・無いですね。

ディーラーが一番高い事に妥当性はあるでしょうか。
佐野は「ディーラーより高い」とアジャスターに言われた場合、アジャスターが100%言い返せないトークを知っています。
普通に考えれば分かる事ですが、あまり”慣れて”いないアジャスターはディーラーより高いと言いがちです。

工場の設備が考慮されない事に妥当性はあるでしょうか。
例えば本格塗装ブースに水性塗装対応可能という設備が複数ある、新車も外車もどんとこい という工場と、ここに預けて大丈夫だろうかと不安になるような設備と人員の工場、これを保険会社は同じ工賃で良いと考えています。

保険会社の考える地域対応単価は妥当性が無い

では、妥当性を持たせるにはどのようにしたらよいでしょうか。

保険会社が鈑金塗装工場の値上げに対して寛容な部分があります。
それは、消費者物価指数の上昇による値上げです。
なぜここにだけ寛容かというと、「1990年代後半から減少していたが、対応単価は安くしなかったので、CPIは下がってたけど保険会社は下げなかったぞ」と言えるからです。
というよりも、言ってました。びっくりしました。都合のいい数字だけ抜き出して説明してきます。

CPI以外に妥当性を持たせるには、かなり細かく定義しなければいけません。
東京都は62区市町村あるそうですが、いくつかはまとめてもいいでしょう。
ディーラーかそれ以外かではなく、設備や一般のお客様に提供している金額をベースに考えなければ、保険会社の考える単価に妥当性を持たせるのは難しいはずです。

まとめ:地域対応単価で保険会社と話をする必要性は無い

最近は車体協による価格転嫁交渉など、鈑金塗装業界は大きな波が出来ていますが、
私、佐野は車体協のやり方は100点ではないと感じています。

顧客に説明のつく方法で、自社の価格をしっかりと計算しておくことが、最低賃金1,500円の時代を見据えた価格転嫁である事は間違いありません。
誰かにあげてもらった工賃は、真に顧客が納得する工賃ではありませんし、保険会社を納得させ続けられるかどうかは疑問です。

という事で、まだ決着はついていませんが、保険会社もいくらかの値上げは呑むでしょう。
価格転嫁に困った鈑金塗装工場があれば手助けをする、これが鈑金塗装業界の未来を明るくするのは間違いありません。
微力ながら、こういったコラム・ブログで手助けをしていきたいと思います。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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