事故加害者側からすると、
「一緒に他のところも直しているのではないか」
と思われるぐらい、事故相手の見積もりが高く感じる事はあると思います。
追記:”今回の事故の傷が分からないくらい、元々傷だらけだった場合”も追記しました。
なぜ高く感じるのかを解説していきます。
対となる記事として、事故加害者が修理内容に口出ししてきたらもございますので、こちらも参考にしてください。
車種・車格による部品代の違い
主に高級車となりますが、ホイール1本やヘッドライト1個で軽自動車の中古車の本体価格ぐらいにはなってしまう場合がございます。
仮に40万円のヘッドライトの交換をするとしましょう。
最低賃金の作業者が作業するはずがありません。
それだけの高級車が入庫するくらいなので、設備もしっかりしていると思われます。
高級車に万が一があっても対応できる保険にも入っているでしょう。
1時間あたりの工賃が、都道府県内の平均的なものより1.5倍~2倍近くても不思議ではありません。
もちろん、不注意で落として割ってしまったら40万円近い損害となります。
これは、1時間あたり工賃に反映させている事がほとんどです。
工場による1時間あたり工賃の違い
事故加害者が「いつも修理している工場ならそんなに高くならない」と考える方がおり、実際に知り合いの工場で修理してくれないか、という加害者の方もいらっしゃいます。
しかし、これはトラブルの元です。相手が自分で選択した工場に出した方がトラブルは少なくなります。
工賃が安い工場では、工賃が高い苦情と比べ許認可や設備、材料、保険・保証、その他様々な理由があって作業が出来ない車両もあります。
医療保険等とは異なり、保険だからといって全国一律の料金ではないので、「そんなに高くなるはずがない」という事はありません。
保険会社も支払い保険金を抑えるため、社会通念上高額である場合はもちろん、不要な作業や部品が発生していないか、交換ではなく修理が可能なのではないか、別の事故まで直す金額が含まれていないか等を確認しています。
工場によって1時間あたり工賃が違いますが、倍違うという事はほとんど無いでしょう。
損害パネル数による塗装工賃の違い
「こちらの修理費は10万円なのに、相手の修理費は40万円だった」
というのはよくある話です。
例えば、バンパー交換とドア交換の場合、感覚的には「大きな一つの部品交換」ですが、同じ車種でも2倍以上、3倍以上金額が異なる場合もございます。
ドア1枚交換に、隣のドアまでキズがついていれば4倍以上も考えられます。
薄い線キズが前から後ろまで渡っている場合、ドア1枚が大きく凹んでいるよりも見た目は大したことが無いのですが、塗装工賃の関係で金額が3倍以上になる事もあり得ます。
ドア1枚が大きく凹んでいても、内部まで損害が及んでいなければ小さな凹みの打ちどころが悪い場合と作業内容に差が無い=金額が同じ事もあります。
同じ車種、同じ箇所でも金額が異なる場合もある
最近は高級なコーティングを施工されている方も増えておりますが、コーティングのみならず屋号の看板ステッカーや社外部品、自動ブレーキ関係のカメラなどに不具合が発生したかどうかでも金額が大きく増える要因となります。
加害者側の軽自動車のバンパー交換が5万円前後、
被害者側の軽自動車のバンパー交換、バンパーのコーティング再施工、レンタカー費用1週間分で13万円という事もあるでしょう。
外車では、修理では元通りにキレイにならない構造となっているバンパーもあります。
この場合、どんなに小さいキズでもバンパー交換となり、同時交換部品や塗装、コーティング、エーミング等も含め40万円以上、という事も考えられます。
今回の事故か分からないくらい、元々傷だらけだった場合
元々傷だらけだったとしても、保険会社は損害賠償請求があれば修理代を認めます。
しかし、交換の必要性については考慮するでしょう。
特に修理と交換の差額が大きい場合、示談のために交換の損害賠償請求を認める場合もあれば、金額の差から修理での作業で示談とならないかお願いする事も考えられます。
これについては、加害者側が口出しをする事も可能です。実際に、
「元々傷だらけで、今回の傷が分からないから修理する必要が無い」
「今回の傷より元々の傷の修理代の方が高いはず」
と考える加害者の方もいらっしゃいますが、ご自身が被害者だとして、同じように言われたら腹が立ちませんでしょうか。
私、佐野はあまり腹が立たないかもしれませんが、腹が立つ人が居る事は想像できます。
場合によっては大きなトラブルとなり、この一言で事故解決まで非常に時間がかかる事もあり得ます。
元々傷だらけでも、ぶつかった時点で損害が無いとは言えません。
また、新たな傷が原因で修理したくなる人、自分がぶつけたのは許容できるけどそうでないものは許容できない人もいらっしゃいます。
過失が1割であっても被害事故である場合、被害者が損害を立証する損害賠償請求の考え方からすれば、
「新たな傷があります。この損害を修理するのにこれだけの費用がかかります。」
という立証をされれば、加害者側が反証で「傷だらけだったから損害はナシ!」というわけにはいかない事が分かると思います。「バンパーは傷だらけだったので無価値!」と主張するのも、飛躍した理論で裁判となれば通用しないでしょう。
素直に支払いを認めた方が素早く事故解決ができますが、どうしても気に入らない場合は弁護士に相談をした方があなたの力になってくれると思います。
まとめ:プロでも車両情報無しに見積もりは出来ない時代になった
車種と箇所だけで電話見積もり、というのは非常にリスクが高く、トラブルの元となるので「金額が異なっても絶対に文句は言わない」という前提でしか電話で金額をお伝えできなくなりました。
特定整備が本格始動する事もありますが、多くの車両でセンサー類が搭載されており、メーカーオプションによって必要な作業が変わるため、車両情報無しに見積もりが出来ないどころか、見積りにかかる時間は勿論、その難易度も上がっております。
素人目に見てどっちの方がひどい、こんなに高いはずがないと言いたくなる気持ちは分かりますが、それを被害者に言ったところで解決がスムーズになるとは思えません。
事故のプロである板金塗装工場や保険会社にお任せいただき、円滑で円満な示談を進めていただきたいと願うばかりです。
投稿者プロフィール
- 2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。
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