価格改定

弊社では、毎年1月1日に工賃の見直しを行っております。
しかし、電気代等の工場維持費の高騰、人材の教育及び確保のための資金不足、設備投資のための資金不足から、5月に再度工賃の見直しと大幅な値上げを行っております。

板金塗装工場の工賃がどのように決まってきたのか、なぜ今値上げを行わなければいけない状態になったのかについて、記載していきます。

鈑金塗装工場の工賃は、一般的に「工数(指数)と1時間あたり工賃(指数対応単価)を掛け算する」形で算出されます。

ある軽自動車のフロントバンパー交換の工数が1.5時間だとして、1時間当たり工賃が1万円であれば、1.5万円となります。
安い工場を探すという事は、
・1時間あたり工賃が安い工場を探す
事とほぼ同じです。
また、どんぶり勘定や定額料金(工数を使わず、この作業はこれぐらい割に合うな~という金額の決め方)、見積り自体が下手(抜けている)という場合にもお安くなる場合はございます。

主な工数表

板金塗装工場の多くが使用している工数表は、指数と呼ばれるものになります。
自研センターと呼ばれる損害保険会社の合弁会社が構造調査や作業調査を行い策定しているもので、ほとんどの見積もりシステムではこの指数を搭載しております。
普及率は非常に高いのですが、前提条件を満たした作業者が作業しても結構な訓練を行わないと工数通りには作業が出来ないと不評となっております。

また、整備関連で使われている日整連作業点数というものもございまして、板金塗装の作業の一部はこちらでも対応が可能です。

その他、地域で作られた工数表や、海外で日本車向けに作られた工数表などもございます

 

一般的な工賃の決め方

多くの価格転嫁を行っていない鈑金塗装を受け付けする店舗(工場)では、損害保険会社の設定している「地域相場」を用いている事が多いと思います。
地域相場は、例えば「東京の国産車ディーラーはいくらが平均、一般工場はいくらが平均」と決めているもので、東京の中で23区内も23区外も同じとなっております。
これでは足りないという事で、2023年ごろから価格転嫁を行う工場が増えています。

なぜ価格転嫁をしなければならなくなったのか

実は、この地域相場では工場ごとの設備や人員、スタッフの仕上がりに対する考え方や、大きな事故等の対応可能な修理内容、塗料の種類や高機能塗装への対応、その他諸々全てを考慮していない金額となっています。
ディーラーの店舗であれば、ある程度設備や考え方は近いものがあり、対応できない修理内容は(基本的に)無く、高機能塗装へも(一部ディーラーでは不正もあったものの)対応が可能であるなど、店舗ごとの差は「立地などの土地建物関連」が中心かもしれません。
しかし、一般工場であれば、例えば「軽鈑金を中心とした、格安店舗」と、弊社のような「大きな事故や外車、水性塗装にも対応しか本格ブースを備えた板金工場」の価格差はほぼ無いという事となります。
つまり、”設備投資をしなければしないほど経営的には有利”な状況だったのです。

弊社では、2019年ごろから少額の価格転嫁を行ってまいりましたが、コロナ禍となりもっと価格転嫁をしなければ廃業する事になってしまう、という状況になりました。
近隣の工場がまだ価格転嫁を大きくしていない中で、弊社のみが価格転嫁をする事は難しく、本来必要な価格転嫁を行えなえずにいたのが実情です。

2023年ごろより、電気代の高騰や消費者物価指数の高騰、円安の影響などから様々な企業で価格転嫁が始まり、経営を継続させていくために必要な分の価格転嫁を5月に行う事となりました。

価格転嫁の終わりはあるのか

2023年現在、板金塗装業につきたいという若者は減り、ベテランの作業者も廃業や健康面の問題で減少傾向にあります。工場によっては、半分以上が技能実習生や特定技能の外国人という状況も出てきています。
(技能実習生をしっかり育てている良い環境の工場では、日本人より遥かに上手い人もいます)
価格転嫁をしていない・できない・しかたが分からない工場は、今いるスタッフが体調を崩した時に廃業する事になるでしょう。

円安が進めば、外国人技能実習生も日本に来る金銭的メリットが減少し、人材の確保が今よりもままならなくなります。
今後、価格転嫁がどこまで進むのかは誰にも分かりません。
しかし、人材確保のコスト等を考慮すると工賃は右肩上がりではないかと考えております。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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