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お見積もりやご相談の中で、
「自分で修理しました」
「SNS等のサイトで作業してくれる人を見つけて依頼しました」
というお客様がいらっしゃいます。

多くの鈑金塗装工場は、”素人が修理するのは良くない”とか、”後からどんな影響が出るか分からない”と脅かすだけだと思いますが、佐野は「板金塗装はあくまでサービス業で、需要に供給しているだけ。自分で修理をするのは、事前にしっかりリスクを理解できているのであれば良い事」だと考えています。

自分で修理のリスク

鈑金塗装工場に依頼をすべき内容の中で、ご自身で修理が出来る場合のリスクを考えていきます。

メラミンスポンジや接着剤などの身近にあるもので作業するリスク

「コンパウンド?なんか削るものらしいから、メラミンスポンジでキズ消えるでしょ!」
と思う方もいらっしゃると思います。
それでは、メラミンスポンジで捨てる部品をこすってみましょう。

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こうなります。黒い車だと細かいキズが分かりやすいですが、白のソリッドだと分かりづらいかもしれません。Google画像検索で「メラミンスポンジ 車」と検索しても、メラミンスポンジで塗装面をこすった写真はあまりヒットしませんでした。

目の細かいやすりで削ったような状態になありました。
この状態なら、恐らくコンパウンドで磨けばある程度ツヤは出ると思いますが、更にこすり続けると大変な事になりそうです。
メラミンスポンジでこするのはやめましょう。それでもメラミンスポンジでテストしたいのであれば、修理に出す前提なら良いと思います。

続いて、接着剤を使う場合です。

弊社でも業務用の接着剤や構造用ボンド等を作業の中で使う事もございますが、適切な使い方をしていないと、リスクのある個所に接着剤を使う事となります。

例えば、外れてしまったパーツを瞬間接着剤でくっつけると、その時は良いかもしれませんが、再度作業する時に「外せないのでパーツを破壊しながら外す」「接着面の塗装が剥がれる可能性がある」という理由から、接着剤を使っていなければ交換しなくて良い部品、塗装しなくて良い部品まで費用が発生し、通常より高額になる可能性がございます。

接着剤を使う前に、まずは修理工場にご相談ください。

ご自身で塗装作業をする場合のリスク

もっとも危険なのは、周囲に飛び散る塗装の飛沫です。

建築塗装等でも、飛沫が飛び散る事により周辺の駐車場に停車中の車両全ての賠償を行って1,000万円の費用がかかった、という事が実際に起こり得ます。
もちろん、個人が自分の車1台の僅かな個所を塗装する場合に1,000万円の賠償が発生するほど広域に飛び散る事は考えづらいですが、周辺の状況によっては大きなリスクのある作業となります。
それでも自家塗装を行うのであれば、個人賠償責任保険等で対応可能かどうか調べてからの方が良いかもしれません。

ちなみに、ご自身で塗装された後悪化して修理工場に依頼すると、多くの場合嫌がられて作業をしないか、作業をしても保証はできないと言われるでしょう。安くなる事もありません。たいていは高くなります。

個人の作業者に依頼のリスク

SNS等で、趣味の延長で修理や塗装を行っている方いらっしゃるようです。
・金額が普通の工場より圧倒的に安い(半額という事もあり得ます)
というメリットはございますが、許認可が無いと行えない作業(安全面等、知識や工具設備の不足で危険な作業)もございますので、基本的にはお勧めしません。
・廃車する予定が決まっている(修理代をかけたくない)
・作業内容は足回り等には関係がなく、安全装置系を外したりしない(センサー脱着でエラーが残るかもしれません)
という場合には、色々なサイトやSNSを使って個人で塗装作業をしている人に依頼するのも選択肢として有りだと思います。

ただし、色が合う可能性は普通の工場より低いと思いますし、下処理や設備等の要因から塗装耐久性も高くないと思います。
レビューが良くても、顧客によって求めているレベルが異なるためにレビューが良い場合もありますし、仕上がりにバラつきがある可能性や、シルバー系は大丈夫だけどパール系は苦手、というものもあるかもしれません。

また、クレームを受け付けていただけないケースも多いと考えられます。
何かあったらやり直してもらいたい、という車であれば、個人の方に依頼するのはお勧めできません。

まとめ

20年以上前は、弊社で勤めている鈑金屋さんや塗装屋さんが独立して工場を立ち上げるという事もありましたが、今は工場を立ち上げるコストを考えると独立する人はほとんどいません。
これは、設備投資が必要な割には価格転嫁できなかったからだと考えられます。

個人の作業の方は、趣味の延長で行っている自家塗装をお金にしている場合もあると思いますが、自分の車の色の系統は得意だけどそれ以外は苦手、といった事も考えられます。
格安修理工場も同様ですが、ニーズがあって成り立っているため、うまく活用できるのであれば活用した方が良いと思います。

簡単な部品交換程度であればYoutubeで作業方法を見れば誰でも出来ると思いますが、鈑金や塗装、部品を補修するといった作業は場合によっては修理代がもっと高くなる可能性もありますので、鈑金塗装の経験のない方が行うのは危険です。

修理工場に一度修理前にご相談いただければ、「これは自分でもできるかもしれないけど、ここからは辞めた方が良い」と教えてもらえる場合もあると思いますので、取り返しがつかなくなる前にご相談をお勧め致します。

投稿者プロフィール

shusukesano
shusukesano
2022年7月時点で板金塗装工場のフロント(事故修理担当者)歴16年目。
年間700件近い事故に携わり、事故の総取扱件数は10,000件を超える。
お客様や取引先からはもちろん、同業他社のフロント担当者からの支持も厚く、困ったときは佐野に聞け!という板金工場も多い。
2022年1月に4歳になった娘と家族のため、月間残業時間10時間以下を心がけている。

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